Hacoaのブランドを包む独特の「空気」を様々な側面から切り取ってお伝えする、この「Haco-air」
つくり手の素顔、商品に込められた想い、伝えられる技についてなどをお届けします
ふだんは触れることのない多彩なHacoaが、あなたの今日をいつもよりほんの少しだけでもお気に入りの日にすることができたら嬉しいです
取材・写真/株式会社真空ラボ デザイン/Hacoa















ずっと使い続けたくなる商品たちは、どういうプロセスを経て出来上がってくるのか。ひとつ一つの過程にはつくり手のどんな気持ちが隠されているのか。いつか誰かに育まれる一品が誕生するまでの軌跡をご紹介します。
語り手/代表・市橋人士 受注スタッフ・市橋真子、前田真紀
Hacoaの運営する販売サイトには、いつもたくさんのコメントがレビューというかたちで寄せられています。ありがたいのは、商品についてだけでなく、購入するまでの対応についても、喜びの声を数多くいただいていることです。顔の見えないインターネットという舞台の裏で、スタッフがどんな想いの下、どういった対応を行っているのかを、今回はお話しさせていただきます。
市橋/小冊子「Hacoact vol.1」の中でも述べていますが、お客様が私たちの商品に求めているのは、モノが持つ実用性や有用性だけではありません。手に取った時に生まれる、期待以上の「感動」です。実店舗の販売では、目で見て美しさや奇麗さを感じ、触ってみて質感から得られる感動を覚えてもらい、ご購入いただいています。しかし、実際に商品を見たり触ったりできないインターネットでは、実店舗で体験できるような過程を踏むことはできません。
では、どうするか。私たちは、受注から配送までに展開される、ひと手間のかかった細やかな対応で、感動づくりを目指しています。いわばネットショップにおける「商品としての仕上げ」です。この大切な役割を担っているのが、商品受注行程であり、担当するスタッフなのです。
市橋真子(以下、真子)/最初に、受注対応の流れについてお話しましょう。私たちHacoaの受注業務には、主に3つのケースがあります。まず、楽天サイト「木香屋(もっこうや)」および独自ウェブショップ「Lobjet(ロブジェ)」という当社が運営する販売サイトへ、個人のお客様が直接ご注文してくださる場合。二つ目は、全国のHacoa取り扱いショップ様にて個人のお客様がご購入いただいた場合のアフターフォロー。三つ目は、twitterやFaceBookなどのSNSを通して、海外にお住まいのお客様から問い合わせをいただく場合です。
前田真紀(以下、真紀)/今回は、最もご注文数が多い、当社運営の販売サイトにおける対応について流れを説明します。まず、木香屋やLobjetサイトでお客様がご注文されますと、私たちのPCに受注連絡メールが入ります。私たちは、モニターの操作画面上で受注を確認し、ご発注いただいた商品の在庫をチェック。納期、商品の特徴や注意、対応に必要となる質問事項などをまとめ、メールで返信致します。その後、お客様のご要望に合わせて名入れやラッピングなどについてのキャッチボールを行い、より適切な商品を選ぶための検品作業を経て、最終的なご了解をいただけた上で、受注を確定し、配送する段取りとなっています。
お送りしたメールに対してのご返事がなかなかいただけなかったり、商品素材や箱などの副資材の在庫が切れていたりなど、最初の受注から配送までの道のりは、とても険しいです。常に改善を加えながら頑張ってこなせるのは、最後にお客様の喜びの声がいただけるからだと思います。特に、こだわり満載のお客様にご満足いただけた時は、充実感に満たされます。
真子/当社販売サイトのお客様には、こだわりを持っている方が本当にたくさんいらっしゃいます。その理由として、ギフトとしてのご利用の多さが挙げられるかもしれません。大切な人への贈り物だからこそ、お客様とのやり取りは、緻密に行います。
例えば、重要な情報の一つに「日付」があります。贈り物の理由が「誕生日」や「結婚記念日」であった時、期日を逃せばその日は二度とやってきません。お客様からのご注文の内容に「贈る理由」が書かれていることはほとんどありませんが、納品日の確認には特に細心の注意を払っています。また、納品期日の確認同様、明細書の封入にも配慮しています。もし贈り物であるならば、明細書が入っていては失礼に当たってしまうからです。発注された方と送り先の方のお名前が異なる際は、「明細書が必要であれば別途発行いたします」とメールでお送りしています。
真紀/ただ、確認が細かくなることでメールの回数が増えるのは、良いことではありません。お客様の中にはメールのやり取りを嫌う方もいらっしゃるので、出来るだけ少ない回数で済ませる努力を常に行っています。しかし最初の発注メールでは、ほとんどの場合、贈り物の情報や名入れの詳細など、大事なことが抜け落ちています。私たちは、書かれている内容から読み取れる限りの情報を汲み取り、含まれていない必要な情報の質問に加えて、再度お客様が疑問に思うであろうことを質問として投げ掛けます。お客様の気持ちを先回りした質問メールをお送りすることで、複数の確認メールや電話確認を極力減らすようにしています。
真子/お客様の意図を汲み取る作業は、お客様の想いを商品に反映することにもつながります。例えば、お届け先の方が男性の場合は、男性がもらって嬉しい男性的な木目を選んだりします。逆に女性であれば、しとやかな風合いの木目を選びます。とても手間がかかる作業かもしれませんが、「お客様の目線」に立ったきめ細やかな対応こそが、お客様の喜びを向上させる行程として、とても重要だと考えています。
真紀/お客様のご要望にお応えしていく過程では、現場との橋渡しも私たち受注スタッフの仕事です。現場から上がってきた商品を、ただ、受け流すのではなく、状況がより改善されるように掛け合い、調整を行います。以前、「黒っぽい色調にしたいです」というご要望がお客様からありました。私は、ローズウッドという樹種を求めていらっしゃることを理解しました。しかし、ちょうどその時はローズウッドが品切れしていたのです。致し方なく、お客様には「納品が一ヶ月後になってしまいますが、構いませんでしょうか」とお尋ねしたところ、お客様からは「待ちます」とご返答いただきました。その頃、同様のご注文が多数重なっていたこともあり、早急の製作仕上がりができないか、現場に掛け合いました。結果、当初ご希望されていた期日には間に合いませんでしたが、予定よりも早く商品をお届けすることができ、お客様に大変喜んでいただけました。
また、受注の立場として、商品についてお客様から寄せられる様々な声を現場に伝える役割もこなしています。受注・配送のポジションは、お客様に最も近い場所です。クレームから感謝の声まで多様な声が届きます。私たちはそれを拾い上げ、企画・製造現場へフィードバックして商品の魅力向上を目指しています。
真子/商品が確定した後に行われるのが名入れです。ご注文されるお客様のほぼ半数がご利用されています。お名前やお店のロゴなどを記入することでオリジナル性が高まり、愛着度がアップします。通常の行程としては、まず、お名前を規定のフォーマットに落とし込んだイメージデザインを、メールにてお送りします。その上で、規定にないデザインをお求めのお客様には、メールや電話などでご要望のデザインを確認させていただく流れです。もちろん、加工できない場所への記載など、不可能なご依頼に対しては最初から明確にお断りしています。
真紀/今までには、ご満足いただくまでに10回以上メールのやり取りを交わしたお客様もいらっしゃいました。記載する場所、フォント(文字の種類)、サイズなど様々な箇所にこだわりをもっていらっしゃったので、何度も確認作業を行いました。納品を終えた際に、レビューの書き込みで「最後まで対応してくれて本当に嬉しかった」というお言葉を頂戴したのが印象に残っています。
こうして名入れを終え、商品がご用意できた段階で、もう一度検品が施されます。キズや整合性の確認にはじまり、節の場所、木目の風合いまで、お客様の視点に立って、求められている商品にふさわしいかどうかチェックを行うのです。
真子/最終工程となるラッピングでは、名入れと同じように気を遣います。何と言っても、手にした時、最初に目に触れるのが包装ですから。特に女性のお客様にとって大きなポイントとなります。これまで常に改善を繰り返す中で、ラッピングの方法は変化してきました。見栄えの良い包み方を目指すだけでなく、用途に合わせて使い分けられるようにもなりました。現在、一般的な贈り物用のクラフト紙の他に、引き出物やご年配のお客様も使いやすい和紙をご用意しています。
市橋/当社は、企画・製造から配送まで一貫して行うメーカーです。商品を企画する際には、一つの商品がお客様に届くまでの全行程を想定しながら取り組んでいます。だからこそ、受注や配送にも細やかな気を配ることができています。商品受注という行程は、「商品を回す事務的な役割」と捉えれば、ただの「処理作業」に終わってしまいます。私たちが、一手間も二手間も、人の手をかけるのは、この工程がHacoaという会社では、「商品づくりの一部」だからなのです。今後は、お客様の立場をさらに理解しながら、一貫したメーカーだからこそできる商品受注のより良いサービスを生み出していきたいと思います。
★いかがでしたでしょうか。次回は「伝統を受け継ぐ職人」にスポットを当ててご紹介します。ご期待下さい。
⇒ Way.6「新しいものづくりを、伝統技術が支える。」


ガムシャラな表情、壁にぶつかった表情、
腕が上がったことに微笑む表情など。
Hacoaは、がんばる新人のいろんな顔が見られる場所でもあります。日々を一生懸命に積み重ねる彼らの横顔をフォーカス。
List.5 製造部/玉村亮介
越前市岩本町にある和紙の製造会社で、職人として働いていました。原料づくりから模様付け、仕上げまで全行程を担当していました。製造していたのは、襖(ふすま)から、壁紙、小物商品まで幅広く使われる和紙です。和紙職人というと「手漉き」をイメージされるかもしれませんが、私が在籍した会社では機械によって漉いていました。ただ、緻密な感覚が求められる色味の調整や模様付けなどは、人の手によって行われていましたね。
「なぜ木工に?」とよく尋ねられますが、私にとっては必然に近い流れだったと今は思います。少し遡ってお話しましょう。実は、私は、大阪のとある大学の建築学科を卒業しました。最初に入社した会社で担当したのは、家具の販売。完成した家具をお客さんに売っているうちに、次第に自分で作りたくなり、今度は家具を製造会社へ移りました。
いや、家具の製造会社にいたのは2年ほどでした。楽しい仕事だったのですが、「いずれは福井に帰ろう」と思っていたので、25歳の年齢を良いタイミングと捉えて帰郷したんです。もちろん、福井でも木工の仕事を探しました。しかし、なかなか見つからない。当時は、Hacoaのブランドはまだ生まれたばかりの頃でしょうか。それでも私は、やっぱりものづくりの仕事にどうしても就きたかった。そんな時、ふと地元の旧・今立町を振り返ると、連綿と歴史の中で続いている越前和紙があったんです。
Hacoaに出会ったのは、和紙づくりに携わり始めて約9年が流れた頃。鯖江市で毎年行われている漆器祭りへ家族連れで足を運び、展示を見て歩いていた時です。シンプルでこだわりを感じられるデザインの並ぶブースに、目が釘付けになりました。「こんな会社が地元にあるのか……」と展示前から動けませんでした。
その時は、それで終わったんです。年齢も35歳。何より、当時の私にはすでに家族がいたので、職を変えるという考えは頭に浮かびませんでした。好きな木工については、趣味のレベルで一定の満足感は得ていました。娘の誕生日プレゼントとしておままごとの道具を作ったり、友だちからの依頼でテレビボードなどをこしらえたり、「誰かのために何かを作る」という作業が本当に楽しかったのを覚えています。市橋さんからは「それがものづくりの本質です」と後で言われましたが。
木工への情熱が再び頭を持ち上げたのは、一昨年の9月頃でした。たまたまHacoaのウェブサイトを覗いていたら、なんと求人の情報が載っていたんです。一瞬、血が沸きましたが、すぐに沈静しました。募集はすでに締め切られていたんです。「ま、いいか」と思いつつも、胸の奥にあった木工への想いは、すでに抑えきれなくなっていました。
★そこで元・和紙職人の玉村さんが取った行動とは?どうぞお楽しみに。